「バイリンガル教育は効果が100%」の嘘

画像の説明

前回の「手話の利用は黙認されていた」のは本当か?ではろう学校で手話を使うことが禁止されたり、生徒の手話使用を黙認していたという話はつじつまが合わないことを書きました。

「ろう文化」を主張する人達で手話教育を禁止して取り入れた口話教育は失敗したが、日本手話の授業と日本語の読み書きを獲得する授業を組み合わせた「バイリンガル教育」は効果が100%ある、かのように主張する話もあります。

この「バイリンガル教育」が本当に100%の効果があるなら素晴らしいのですが、現実にはその主張が出てから20年以上の歳月が経つにもかかわらず、結果は公表されていません。

一言で言えば、「全ての聴覚障害児に口話教育を伝えたら問題は解決する」という昭和初期の誤りと同じ構図が見られます。

私はある女性から「あなたは実はもっと聞こえるんじゃないか?」と指摘された事があります。話を聞くと、手話を主に習ってきた聴覚障害者の日本語表現力が乏しいので、あなたの文章を読むと信じられないという話です。

 もっともな話です。
 
話をくわしくお聞きすると、日本語表現力が乏しいという聴覚障害者は当時、手話を中心に教育をすすめていた奈良県立ろう学校の卒業生の事でした。わたしも20年以上前に手話を中心に授業を行っていたとの話を聞きました。

しかし、手話中心の教育の結果、日本語の読み書き能力の取得が十分ではなかった事から、現在は補聴器を使った聴覚口話も併用する方向に見直しが図られていると聞きます。

「バイリンガル教育」は効果が100%あるかのように主張していた関係者は当時の書籍で盛んに「聴覚口話教育は効果が無かった」と主張していましたが、
その主張を訂正したり、撤回した話は聞きません。

昔は手話で教育を行っていた頃は手話と日本語の読み書きができたと主張する人たちもいますが、前提となる話が抜けているのです。

昭和23年(1948年)以前の聾学校への通学は義務ではなかったという点です。

当時は抗生物質もなく、中耳炎など耳が聞こえなくなる事例が現在より多かったといわれ、日本語を覚えてから中途失聴した人も多くました。

生まれつき、まったく聞こえないろう者は文章の丸暗記が求められる授業についていけず、退学した人も多くいました。

中途失聴した人で、日本語の読み書きができた人がそのまま卒業した場合もあります。その人たちがろう者として、クローズアップされたら、当時は授業で手話と日本語の読み書きができるようになったと錯覚してしまうでしょう。

生まれつき、まったく聞こえないろう者で手話による教育を受けて、聾学校を卒業された方に日本語の読み書きができるようになった人もいたかもしれません。

しかし、多くの方が物故された今となってはわからず、どのように日本語の読み書きができるようになったかは、確認のしようがありません。

一方で地域に聾学校がなく、学校にも通えず、十分な教育を受けられなかったため、読み書きが不自由なろう者の高齢者もいます。

昭和23年(1948年)には、聾教育の義務制が実施され、教育の機会均等の形がとられました。その当時の聾学校は分校を含んで、全国で64校(2014年現在106校)しかなく、就学率も40%しかありませんでした。
あとから、就学率が上がってきたとはいえ、それでもまだいたのです。

現在とは環境も条件も異なることを無視して、現在と同じ条件で考える事は明らかに誤りです。

当時は高性能な補聴器もありませんでした。
寄宿舎がない聾学校も多く、戦後の混乱と貧しさゆえ通学できなかった児童も多くいました。当然、パソコンもインターネットもありません。

「バイリンガル教育」の話に限らず、ネット上には明らかに当時の時代状況などを考慮せず、現代の条件と同じ感覚で書かれた、同情を誘うような記事を多く見かけます。

こうした誘導記事を鵜呑みにしてしまわないよう、十分な注意が必要です。

当時の限られた状況で模索して生きてこられた先人に、賛否両論はあれど、まずはその苦労に対するねぎらいと、敬意を払うことも大切ではないかと思うのです。

お読みいただきありがとうございます。「そうだったのか!」と思ったら、シェアを!

コメント


認証コード8351

コメントは管理者の承認後に表示されます。